独立系FPが解説する退職金のかしこい受け取り方法!一時金と退職年金どちらがお得かも解説

会社員の多くは退職時に「退職金」が支払われます。この退職金ですが、会社によっては「一時金」と「退職年金」のどちらかを選択することになります。その際に、「一時金」と「退職年金」どちらを選択すべきかよく分からない方も多いでしょう。もし、この受け取り方法を誤ってしまうと、税金を多く取られてしまうかもしれません。

この記事では退職金を受け取る際に「一時金」と「退職年金」どちらが税金面で有利になるかを解説します。退職金の受け取り時期が近づいている方にとって有益に情報になるでしょう。ぜひ最後までご覧ください。

目次

結論!税金面では一時金が有利!

税金面で考えた場合、退職金は「一時金」で受け取った方が税金面で有利です。

これは、退職金を一時金で受け取ることで、「退職所得控除」が適用されるためです。後述で解説する「退職所得控除」を活用することで税負担を大幅に軽減できる可能性があります。とくに勤続年数が長い方ほど控除額(非課税額)が大きくなるため、以下で詳しくみていきましょう。

退職金の受け取り方は2パターン

ここでは、退職金の受け取り方法である「一時金」と「退職年金」の特徴についてみていきます。

一時金

「一時金」とは退職金を一括で受け取ることです。定年退職なら、一度に1,000万円以上の金額がもらえることもあるでしょう。その退職金をまとめて受け取ることで、「退職所得控除」が適用されます。退職所得控除の計算式は以下のとおりです。

退職所得の計算方法

(退職金-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額の計算方法

勤続年数 :退職所得控除額
20年以下:40万円×勤続年数
20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

※勤続年数の端数は1日であっても1年とカウントします
※控除額が80万円未満の場合、80万円を控除額とする

退職年金

「退職年金」とは、分割払いで受け取ることです。毎月一定額を受け取る仕組みとなっており、公的年金とあわせて老後の生活資金にあてることが多いです。
たとえば、毎月10万円を10年間に分割して退職年金を受け取るといった方法です。

一時金と年金を組み合わせたものもあります。

なお、一時金と退職年金を組み合わせて受け取ることも可能です。最初にある程度まとまった資金を受け取り、残りは毎月退職年金として受け取るといった方法です。どの退職金制度を取り入れているかは、会社によって異なるため、気になる方は一度自身の会社へ確認することをおすすめします。

一時金は「退職所得」として計算

一時金の場合は、所得が「退職所得」として扱われ、「退職所得控除」が適用。
この「退職所得控除」が税金面で大きな優遇処置になっています。
所得の計算方法と退職所得控除の計算は以下のとおり。

所得の計算方法

(退職金-退職所得控除額)×1/2

退職所得控除額の計算方法

勤続年数                 退職所得控除額
20年以下                40万円×勤続年数
20年超        800万円+70万円×(勤続年数-20年)

※勤続年数の端数は1日であっても1年とカウントします
※控除額が80万円未満の場合、80万円を控除額とする

たとえば、35年間勤務していた方では

800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円

1,850万円が退職所得控除になり、退職金から差し引くことが可能

退職年金は「公的年金等にかかる雑所得」として計算

一方の、退職年金の場合は「公的年金等にかかる雑所得」として計算します。
所得の計算方法は以下のとおりです。

(a)収入金額の合計額×(b)割合-(c)公的年金等控除額

公的年金等控除額の規定(65歳以上)
(a)収入金額の合計額      (b)割合              (c)公的年金等控除額
110万円以下               -                    -
110万円超~330万円未満          -               110万円
330万円~410万円未満       ×  0.75             27万5,000円
410万円~770万円未満      ×   0.85           68万5,000円
770万円~1,000万円未満    ×  0.95           145万5,000円
1,000万円以上        -          195万5,000円

※公的年金等の収入金額が110万円以下の場合、所得は0円。

参照 国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

一時金で受け取る場合の税金額を計算

では、一時金で受け取る場合、勤続年数30年、退職金1,500万円の条件で実際にかかる税金を計算してみましょう。

退職所得控除額

=800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円

所得

(退職金-退職所得控除額)×1/2
=(1,500万円-1,500万円)×1/2=0万円

この場合、所得は0円になり、退職金にかかる税金も0円で済むことがわかります

退職年金の場合は雑所得として毎年税金がかかる

対して「退職年金」として受け取る場合は、公的年金と同様「雑所得」扱いとなり、公的年金と合算して計算され「公的年金等控除」が適用されます。
この公的年金による所得と、その他の所得などを合わせた合計が所得として扱われ、課税される仕組みです。

以下で、退職年金で受け取る際の税金額を計算してみます。

Bさん        65歳
勤続年数       42年
公的年金の年間受取額 240万円
退職年金       年間100万円※
(※)退職金2000万円を20年に分割して毎年100万円受け取ると想定。

前述で解説した退職年金の計算式を参考に税額を求めていきます。

課税所得

(240万円+100万円)×0.75-27万5000円=227万5000円

227万5000円が課税対象となり、所得税と住民税が課されてしまいます。

退職金を「一時金」で受け取る際のデメリット

退職金を「一時金」で受け取る際のデメリットは退職金を使い果たしてしまう可能性があることです。

一度でまとまった資金を受け取れる退職金ですが、つい気が緩んでしまい、無駄な買い物や高額なレジャーに使ってしまう方も少なくありません。そのため、一時金で受け取る際はきちんとした計画性を持ち、退職金を使い果たしてしまうことがないよう気を引き締めることです。

退職金の確定申告は必要?

退職金を受け取るときまでに、「退職所得の受給に関する申告書」を退職金の支払者(勤務先)に提出している方は、原則として確定申告をする必要はありません。

ただし、医療費控除などを受けるなどの理由で確定申告書を提出する場合は、確定申告書に退職所得の金額を記載する必要があります。

退職する方は事前に「退職所得の受給に関する申告書」について会社に確認しておくとよいでしょう。

参考:国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm

まとめ

解説してきたとおり、一時金のほうが税金面を考えると退職年金より有利といえます。しかし退職金は1,000万円以上のまとまった額を受け取ることも少なくありません。

その場合、なるべく無駄な浪費はせずにきちんと退職金を管理し、資金が枯渇しないよう工夫することが重要です。もし、自身で管理ができない方は、税金がかかりますが「退職年金」にすることも選択肢の1つでしょう。

また、退職金を有効活用した場合は独立系FPに相談することをおすすめします。企業系FPとは違った角度から提案を受けられるかもしれません。

もし、神戸で独立系FPをお探しの方は「NEWSTYLE神戸FP相談」でも相談が可能です。
「NEWSTYLE神戸FP相談」では完全中立で金融商品をいっさい販売しない独立系FPが相談者様の利益を優先して対応致します。

オンラインでも対応可能なため、神戸以外の方からのご相談もお待ちしております。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

ツヨシのアバター ツヨシ ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引士

大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職。
在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。
会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立系FPとして起業。
現在は相談業務、執筆業務を中心に活動中。

目次